「葛之葉稲荷神社」は、阿倍王子神社(大阪市阿倍野区)の境内社で、陰陽師・安倍晴明の母「葛の葉」にまつわる伝説で知られる小規模ながらも趣深い神社です。江戸時代に建てられた本殿は、文化財としても価値が高く、訪れる人々を魅了します。

葛之葉稲荷神社の基本情報
項目 | 内容 |
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神社名 | 葛之葉稲荷神社 |
読み方 | くずのはいなりじんじゃ |
公式ウェブサイト | なし |
公式SNS | X(旧Twittre):なし インスタグラム:なし YouTube:なし |
御祭神 | 宇迦之御魂大神 葛之葉稲荷大神 末広大神 萬直大神 玉姫大神 白玉大神 宝玉大神 玉照大神 日切大神 大高大神 |
ご利益 | 子宝祈願、安産祈願、縁結び、家庭円満 |
御朱印 | 無し |
崇敬会 | 無し |
鳥居の形 | 稲荷鳥居 |
月次祭 | 特に定められていない |
年次祭 | 特に定められていない |
創建年 | 江戸時代(元禄年間) |
安倍晴明の母・葛の葉の伝説
安倍晴明の母とされる葛の葉には、霊狐(狐の精霊)であったという伝説があります。『葛の葉物語(信太妻)』は、歌舞伎、浄瑠璃、文楽、文学作品などでも人気の題材として扱われてきました。
『葛の葉物語』のあらすじ
昔々(10世紀)、現在の大阪北西部にあたる摂津国に、安倍保名(あべのやすな)という男が住んでいました。ある日、保名は狩人たちに追われている狐(きつね)を見かけたので、かくまって逃がしてあげました。保名は狩人たちに殴られ、蹴られ、身体のあちこちに深い傷を負います。そんな傷だらけの保名の家に「葛の葉」と名乗る若い女が訪れ、保名の看病をしました。
これをきっかけに一緒に暮らすようになった保名と葛の葉は、しばらくしてひとりの子供を授かりました。この子供こそが陰陽師として後世に名を残すことになる安倍晴明です。家族3人で幸せに暮らす日々が続きましたが、晴明が6歳のころ、美しい菊の花に夢中になった葛の葉は思わず狐のシッポが出ているところを我が子(晴明)に見られてしまいます。
正体が知られてしまった葛の葉は、即座に森へと帰ることを決意して、「恋しくばたずね来きてみよ和泉なる 信太の森のうらみ葛の葉」という一首を置いて姿を消しました。
保名と晴明は森へと向かいました。森の奥まで向かうと涙を流しながら父子を見つける狐がいます。そこで保名は「もとの葛の葉に戻ってくれ」と言うと、狐は葛の葉の姿になって「私はこの森に住む白狐です。狐である私はもう、人間の世界では暮らせません」とだけ伝え、晴明に白い玉を手渡すと、再び狐となって森の奥へと去っていきました。
※ さらに詳しく物語を知りたい方が、青空文庫に掲載されている『葛の葉狐』(楠山正雄)がおすすめです。
安倍晴明神社および保名の稲荷神社
阿部王子神社には、50メートルほど離れた敷地に、飛び地境内社として安倍晴明神社があります。さらに安倍晴明神社の境内社に、泰名稲荷神社(やすないなりじんじゃ)という保名の名前が付けられた神社があります。
安倍晴明神社のある場所は、安倍晴明の生誕の地であると伝えられています。つまり、保名と葛の葉、そして晴明という家族3人が楽しく暮らしていたエリアで、それぞれ境内社として祀られ、家族が離れることなく日々を過ごしています。
阿部王子神社で最も古い社殿
葛の葉稲荷神社の本殿は江戸時代(元禄年間)に建てられたもので、阿倍王子神社のなかで最も古い建物です。入母屋造檜皮葺という伝統的な建築様式で、朱色と極彩色が施された華麗な色使いや細工が特徴です。
葛之葉稲荷神社への行き方・アクセス
項目 | 内容 |
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所在地 | 大阪府大阪市阿倍野区阿倍野元町9-4 |
アクセス | 阪堺電車上町線「東天下茶屋駅」から徒歩約5分 |
駐車場(有無) | 無し |
合わせて拝みたい
徒歩圏内には以下の神社があります:
- 安倍晴明神社(徒歩約2分)
- 御烏社(隣接)
葛之葉稲荷神社のまとめ
葛之葉稲荷神社は、小規模ながらも歴史的価値と物語性を兼ね備えた魅力的なスポットです。特に、安倍晴明ゆかりの地として訪れる価値があります。静かな環境で心を落ち着けながら参拝し、美しい本殿や伝説に触れてみてはいかがでしょうか。